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白と黒 その1

 炊飯器からメロディが流れます。それを聞きつけた子供たちは一斉に炊飯器の前に並び、母親を見つめます。
 母親は真っ白な炊きたてのご飯の表面をしゃもじでちょっとすくい、横に置きます。すると子供たちが唱和します。「神様と」母親はまたちょっとすくって横に置きます。すかさず子供たちが唱和します。「仏様と」もう一度すくって横に置きます。「ご先祖様に」
1回拍手をし、手をあわせたまま「ありがとうございます」と頭を下げます。

 いつからか、我が家ではこんな奇妙な習慣ができてしまいました。

私が小さかった頃。祖母の家では毎朝、ごはんが炊けると、小さなお皿や器に少しずつご飯をもり、神棚や仏壇に供えていました。祖母はこのお供えを下げると、小さいお団子ぐらいのおにぎりにして、よく私たちに食べさせてくれました。

「神様や仏様にお供えしたものだから、ご利益があるんだよ。良く感謝してお食べ」お供えの意味のわからない私は祖母に聞きました。「神様や仏様はごはんを食べないの、いつも残しているよ」すると祖母は、「神様や仏様は、湯気やあったかさを食べているんだよ」といいました。湯気やあったかさではお腹がいっぱいにならない私は、神様や仏様はすごいなと思っていました。

 ところで、私の家には仏壇も神棚もありませんでした。祖母に「どうしたらいいの」と尋ねると、「それは気持ちの問題だよ。神様や仏様にお供えするという気持ちがあれば、神棚も仏壇もいらないよ」そういって、炊飯器の中でのお供えを教えてくれたことがありました。
 大学に入り、一人暮らしが始まったころ、真っ白な炊きたてのごはんを見ていたら、自然に「神様と、仏様と、ご先祖さまに・・・」と出てきました。結婚し、子供が生まれてもそのまま続いています。

 白という色にはなにか神聖さを感じさせるものがあるのでしょうか。

 時代劇や時代小説ではよく「お白州」という言葉がでてきます。江戸時代の法廷で、庶民が座らされた「砂利敷き」です。お奉行様は一段高い座敷にすわり、罪人や訴人が「砂利敷き」にすわっています。
 この「砂利敷き」の砂利が白かったから白州というより、神聖な場所として「お白州」と名付けられたとも聞きました。

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